それから約2週間が過ぎ、ようやく手元に届いたのでレビューをお届けします。基本的な仕様は前回の記事でご確認ください。
まずは到着直後の状態から。上の写真の通り箱は角が潰れているうえ、写ってはいませんが謎の茶色い液体の跡も付いています。
薄いプチプチ1枚に包まれて、中国は広州から海を渡って来たことを考えればしようがないのかもしれませんが、お世辞にも綺麗とは言えない状態です。
気を取り直して開封へ。箱を開けてすぐ目に入る説明文は、DC8 本体を収めた小箱の裏面に直接書かれています。
小箱は3つ入っており、それぞれDC8 本体、電源アダプタ、ケーブル一式が個別に収められています。
本体は緩衝材に囲まれているので、箱の中で動くことはなさそうです。
本体底面にはDesigned in Germany / Made in PRC の文字。設計はドイツ、製造は中国 (PRC = Peoples Republic of China = 中華人民共和国)です。
筐体はアルミ製。ヘアライン仕上げで安っぽさはなく、適度な厚みもあり丈夫そうです。角は丸められており引っかかりもありません。
本体サイズは実寸で約幅140 x 奥70 x 高30mm。重量計がないため重さは量れませんが、eBay の商品ページには246g と記載があります。
上の画像はBOSS DD-7 (129 x 73 x 59mm、440g) を載せてみたところ。実際にDC8 とDD-7 を持ち比べると、数字以上にDC8 の方が軽く感じました。
続いて基板を確認。右上に2つ並んでいるLM2596-ADJ 電源レギュレータで、A/B 端子を9V 固定端子から独立させるとともに、電圧をコントロールしているものと思われます。
とはいえ中華サプライは、「アイソレーテッド」と書いてあっても実際は単なる分岐型ということが少なくありません。
そこでテスターで測定したところ、Vitoos の説明通りA、B、9V 固定端子が独立していることが確認できました。
またすべての端子にエフェクターをつなぎ、デジタルとアナログが混在する状況にしてもノイズはありませんでした。メーカーの売り文句通りの性能と言えそうです。
参考までに独立・非独立の確認方法は、まずテスターを抵抗(Ω)にセット。次いでサプライの電源を切った後、個別の出力端子に1本ずつテストリードを当てます。
リードが触れた際の表示が無限(∞)ならそれらの端子は独立しており、ゼロに振れると非独立です。
続いて各端子の電圧を計測してみました。結果はA/B が9V 設定時でほぼ9V ちょうど、12V 設定で約11.5V、18V 設定で約17.5V。
6個の9V 固定端子は、若干バラつきはあるものの概ね9.8V 前後。これは一部のパワーサプライが売りにする「新品の006P 乾電池の電圧」でもあります。
いずれもアナログメーター読みなので若干の誤差はありますが、実用上の問題はなさそうです。
出力電流の計測は、手持ちのテスターが最大250mA 対応なので断念しました。300mA 端子ならイケるんじゃないかと思って試すとヒューズが飛ぶのでやめておきましょう。(1敗)
なおDC8 の最大電流は、各端子に書かれている数値を足すと3800mA という大容量になりますが、説明文にはアダプタと同じ2000mA が上限と書かれています。
付属品を見てゆくと、電源アダプタの仕様は12V DC / 2000mA 出力、センターマイナス、100V-240V 対応。PSE マークも付いています。
付属のケーブルはDC-DC が8本と、2つの端子を統合して電圧を2倍にするためのY ケーブルが1本。
DC ケーブルの長さは端子から端子までで約59cm。太めで丈夫そうな反面、曲げ癖も強いのでまっすぐにするには苦労しそうです。
今のところ国内代理店がないため、入手するには海外からの個人輸入か、アマゾンの出品者からの購入のいずれかになります。
どちらも不安要素はありますが、電圧可変機能や軽量コンパクトな筐体、手頃な価格といった魅力を考えると、挑戦する価値は十分にあると思います。
なおeBay で購入する際の注意点を1つ。Vitoos DC8 で検索すると複数ヒットしますが、それらは価格だけでなく電源アダプタの端子の形状も異なります。
つまり単純に最安値のものを買うと、届いてみたらアダプタがイギリス仕様だった、ということもありえるわけです。
端子が違っても電圧は100V~240V 対応なので、変換アダプタを用意すれば国内でも使えます。しかしアダプタを持っていなければ新たに買う手間と出費がかさむので、米国仕様であることを確認して購入することをおすすめします。
2016年5月4日追記:スピーカーシミュレータなどで知られるドイツのPalmer が、DC8 にそっくりなパワーサプライPWT08 を販売しています。
見た目は若干異なりますが、A/B とそれ以外の端子が独立していることや、最大供給電流2000mA、電圧可変スイッチの場所など共通点が多いことから、おそらくVitoos のOEM 製品と思われます。
寸法と重さは140 x 80 x 32mm、300g。パルマーのペダルボードPedalbay シリーズの裏に固定できます。ドイツでの実売価格は98ユーロと、DC8 の約2倍です。
2016年10月19日追記:日本のVital Audio が、DC8 そっくりなパワーサプライVA-08 を10月下旬に発売します。
おそらくDC8 の色を変えたOEM 製品と思われますが、製品ページには「このパワーサプライの特徴は全てのポートがアイソレートされているため、どこかのポートに不具合が生じても全てがダウンしてしまう危険性がなくなります」と書かれています。
元ネタのDC8 は全端子アイソレートではないので独自の工夫を凝らしているのかと思いましたが、VC-08 の製品ページ下部には「9Vポートは完全にアイソレートしているわけではありませんので、9Vポート同士の接続はできません」と書かれています。
ヴァイタルオーディオの「アイソレート」の定義がよく分かりませんが、結局のところ9V 端子は個別にアイソレートされていないようです。
となると値下がりしたDC8 が4200円ほどで買える今、VA-08 を3倍近い値段で買う必要性は薄いように思えます。
またバイタルオーディオおよびフックアップには、消費者を勘違いさせるような説明ではなく、正しい情報を分かりやすく伝えて欲しいところです。
2017年3月7日追記:バイタルオーディオが、VA-08 の後継となるVA-08 Mk-II を3月下旬に発売します。
全端子が独立したフルアイソレート仕様になりつつ、希望小売価格は初代から1000円増しの税別1万3500円という、値頃感のあるパワーサプライです。
設計は初代と同様に「ドイツの専門メーカー」(by Vital Audio) とのことなので、おそらくVitoos のOEM と思われますが、本記事の公開時点でVitoos の公式サイトに似た製品は掲載されていません。
またMk-II の発売に伴い、初代の販売は終了します。初代の購入者にとって、発売から半年も経たずに、完全な上位モデルがほぼ同じ値段で発売されるというのは、なかなかショッキングな出来事と言えそうです。
ソース: Vitoos - DC8
参考: Palmer - PWT08
フックアップ - Vital Audio VA-08
フックアップ - Vital Audio VA-08 (2016年9月13日のWeb魚拓)
フックアップ - Vital Audio VA-08 Mk-II
サウンドハウス - パワーサプライ一覧
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