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2019/05/24

ローリング・ストーンズ、ビター・スウィート・シンフォニーの全権利をヴァーブに返還


ローリング・ストーンズが、ビター・スウィート・シンフォニーの権利をヴァーブに返還したことがわかりました。

ビター・スウィート・シンフォニーは、英国のバンドThe Verb が1997年に発売した曲。

90年代とブリットポップを代表する大名曲ですが、発売後のゴタゴタの結果、すべての権利がストーンズに渡り、ヴァーブには売上が一銭も入ってこない状況になっていました。

しかしヴァーブのヴォーカルのリチャード・アシュクロフトは、2019年4月にこの曲の権利がストーンズから返還されたと発表。

20年以上の時を経て、ようやく作曲者のもとへと帰ってくることとなりました。




アシュクロフトのコメント全文訳

大きな喜びとともに伝えたい。ミック・ジャガーとキース・リチャーズが、彼らの持つBitter Sweet Symphony の権利を俺に返すと言ってくれたんだ。

この驚異的で俺の人生を肯定してくれるような出来事は、ミックとキースの思いやりと太っ腹な人柄によって実現した。

加えて彼らは、ビタースウィートの作曲者のクレジットから自分たちの名前を外すとともに、曲に関連する売上のすべてを俺に渡すことにも合意した。

この交渉の中心人物たち、俺のマネージメントをしてくれているSteve Kutner とJohn Kennedy、ストーンズのマネージャーであるJoyce Smith とJody Klein (実際に電話で話してくれたことに) に感謝する。

そしてミックとキースには、心からの感謝とリスペクトを捧げたい。

音楽は力なり

リチャード・アシュクロフト



めでたしめでたしということで、ではなぜこの曲がストーンズのものになったかを簡単にご紹介します。

まずヴァーブがビタースウィートシンフォニーを発売したのは1997年。歌詞やメロディはヴァーブのオリジナルですが、曲中で流れているオーケストラの演奏は、英国のアンドリュー・オールダム・オーケストラが1966年に発売した、The Last Time という曲からサンプリングしたものです。



そしてこのThe Last Time は、ローリング・ストーンズが1965年に発売したThe Last Time という曲のカバーです。



つまり順番的には、ストーンズ版のThe Last Time が最初で、それをオーケストラがカバーし、そのオーケストラ版の一部をヴァーブが使ったという流れです。

そしてヴァーブは、オーケストラ版のThe Last Time をサンプルすることについて、その曲の権利を持つアブコ・レコード社の許可を得ていました。

しかしビタースウィートの発売後、アブコの社長でストーンズのマネージャーでもあったアレン・クラインは、当初の約束よりも長くサンプリングしているとしてヴァーブを訴えます。

その結果、ビタースウィートの作者にミック・ジャガーとキース・リチャーズが名を連ねるとともに、すべての売上がストーンズのものになるという、ヴァーブにとっては悪夢と言える結末を迎えた、というわけです。

参考までに、下の画像はYouTube で公開されているBitter Sweet Symphony のミュージックビデオの詳細情報欄です。

作詞/作曲のところにMick Jagger とKieth Richards の、ライセンス所持者にABKCO の名がそれぞれありますが、今回の発表を踏まえて変わるものと思われます。


なおすべての発端となったストーンズのThe Last Time ですが、実はこの曲自体がカバー曲です。

元となったのは米国のThe Staple Singers が1958年に発売した、This May be the Last Time という曲。



後にキース・リチャーズは、The Last Time が実質的にステイプル・シンガーズの曲のカバーであることを認めていますが、曲のクレジットにステイプルズの名はなく、今なおストーンズのオリジナルということになっています。

つまりアブコ社とストーンズは、よそからパクった曲を根拠にヴァーブを訴えることで、世界で1000万枚以上売れたモンスターアルバムの代表曲を手に入れたというわけです。すげえな。

なおアシュクロフトは、今回の件についてBBC からの取材に対し、「サッカーイングランド代表のテレビ放送で、試合前にビタースウィートが流れるだろ?これで心おきなく試合を楽しめるよ」と述べています。よかったよかった。

参考
BBC - The Bitter Sweet Symphony dispute is over
NME Japan - ザ・ヴァーヴの“Bitter Sweet Symphony”、あなたが知らないかもしれないトリビア10
Richard Ashcroft (Facebook)

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