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2016/09/01

コラム:1980年代から続く「肉抜き」ギブソン レスポールの歴史


ギブソンが長きに渡ってレスポールに採用している「ウェイト・リリーフ」加工。ボディバックのマホガニーをくり抜き、その上からメイプルでフタをすることで、レスポールらしい見た目を維持しつつ軽量化することが目的です。

このウェイト・リリーフの歴史と種類について、ギブソン公式サイトの説明を元にご紹介します。



(デジマートによる日本語字幕付ギブソンUSA工場動画)

ギブソンがウェイト・リリーフを始めたのは1980年代初頭。ギブソンいわく「当時は単に軽量化することが目的で、穴の数や形に特別な意味は無かった」とのことです。

しかしさすがにそれではマズいと思ったのか、2000年代に入り特徴の異なる3種類のウェイト・リリーフ方法を確立します。


1:Traditional Weight Relief / トラディショナル・ウェイト・リリーフ

1980年代初頭のくり抜き方を元にした「伝統的」な仕様。ボディ下部の低音弦側に9個の丸穴を空けることで、「軽さ」と「ソリッドらしさ」を両立している。その見た目から「スイス・チーズ」と呼ばれることも。



2:Chambered / チャンバード

ボディの大部分をくり抜く仕様。2008年のレスポール・スタンダードなどが採用。ギブソンいわく「生鳴りが大きい」。Fホールこそ無いものの、実質的にセミアコースティックギターと言える。


3:Modern Weight Relief / モダン・ウェイト・リリーフ

トラディショナルとチャンバードの中間的な仕様。「チャンバードのレスポールを大音量かつハイゲインで使うと共振しすぎる」という声に応えて開発された。初採用は2012年のレスポール・スタンダード。


2016年時点では、これら3種類に完全ソリッドを加えた計4種類をモデルごとに使い分けています。2015年モデルからは製品ページでウェイトリリーフの有無と種類を公開しているので、購入前に確認可能です。


さてこのウェイトリリーフについては、レスポール愛好家の間で賛否両論があります。海外のギター掲示板では、「軽さは正義」「鳴りが増す」という賛成派と、「レスポールは完全なソリッドボディであるべき」「あの重さに耐えてこそ男」という反対派による喧喧囂囂の議論が、ことあるごとに繰り返されている状況です。

またウェイトリリーフの有無について、2015年モデルからは製品ページで確認できますが、それ以前の約30年間に製造された個体においては、無傷で確認するにはX線(レントゲン)撮影ぐらいしか方法がありません。

これについては賛成派・反対派の双方から、情報を公開してこなかったギブソンに対し不満の声が上がっています。


それを反省したのかは分かりませんが、近年のギブソンは自社製品の仕様について、ウェイトリリーフの有無や使用する接着剤の種類など、詳細な情報を公開しています。

特にウェイトリリーフについては、事前に分かって買うのと買ってから知るのでは大違いです。今後もこの方針が続けられることと、後世の参考のために生産終了後も情報が削除されないことを願いたいところです。

なおウェイトリリーフをしているメーカーはギブソンだけではありません。有名所では、数年前にPRS のウェイトリリーフが発覚した際はちょっとした騒ぎになりました。


上は米国製PRS Singlecut のX線画像。PRS いわく同モデルの末期に、一部の個体でウェイトリリーフを採用したとのことです。また後継のSC シリーズにおいても、ごく少量ながら「肉抜き」されている個体が存在するとしています。

またこれらの騒動の影響で、海外ではギターのレントゲン撮影が一時的に流行しました。「X Ray Guitar」で画像検索すると、色々と興味深い画像が見つかります。

自分と同じギターの写真を探すのも一興ですが、その際は「真実は時に残酷である」ということを肝に銘じておきましょう。

参考: Gibson - Weight Relief: What’s it All About?
Gibson - Lighten Your Les Paul Load
Gibson - Chambering the Les Paul: A Marriage of Weight and Tone
Ruido eléctrico - Les Paul con agujeros (Weight relief holes on Gibson Les Paul)
Harmony Central - Well Gibson is not the only one
PRS Forum - The X-Ray Thread
サウンドハウス - Gibson 一覧


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