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2019/08/02

ギブソンが大量のギターを意図的に破壊したことを認める、理由は「不良在庫の処分」


大量のギブソン製エレキギターがショベルカーに踏み潰される動画がYouTube に投稿されて話題を呼んでいます。

動画を投稿したのは、ギブソンのメンフィス工場で6年間働いていた元従業員のBJ Wilkes 氏。

Wilkes 氏はギター系ユーチューバーThe Guitologist の取材に対し、「この動画はギブソンの経営陣が変わった後に撮影された。彼らは決算の前に不要なものを処分したいと考えた。このギター(訳注:2011年頃に発売されたFirebird X)は全く売れず、廃棄処分するしかなかった」と述べています。




上がWilkes 氏の投稿したファイヤーバードX の破壊動画。下がThe Guitologist のインタビュー動画です。

いずれの動画もギブソンを非難するコメントが大量に投稿されており、海外のギター系フォーラムでも炎上状態となっています。



これらの騒動に対しギブソンは公式声明を発表。全文訳は以下の通り。


先日公開されたFirebird X の破壊動画は、2009年から2011年の間に製造されたFirebird X のうち、危険な部品の影響で故障し、修理不能になった一部の個体を隔離したものです。

これらの隔離されたギターは他者に寄付できる状態ではないため、破壊することにしました。

最近我々はGibson Foundation (ギブソン財団)の 再始動を発表しました。2002年の設立以降、この財団は学校や慈善団体などに対し、ギターや募金など総額3000万ドル以上を提供してきました。

財団の再始動にあたり、まず我々は今後1000日間、毎日1本のギターを寄付することにしています。また財団へ寄せられた寄付金は、全額が音楽教育や音楽文化の醸成、ミュージシャンへの支援に使われます。


この声明ついてWilkes 氏は、「Firebird X のボディは特殊なため再利用できないんだ。率直に言ってこのギターは最悪だね。Windows 98 時代のテクノロジーが大量に詰め込まれてる」と述べています。


元従業員にここまで言われるファイヤーバードX についてざっくり説明すると、当時のギブソンが持つすべての技術を詰め込んだ超多機能ギターです。

仕様的には3つのピックアップとピエゾにはじまり、自動チューニング機能、エフェクター内蔵、PC との連携、Bluetooth による無線操作などなど。

フィニッシュはブルーとレッドの2色で、それぞれ900本ずつ、合計1800本の限定生産でした。

しかしあまりにも多機能過ぎたのか、それとも約60万円(!!)という価格がネックだったのかはわかりませんが、破壊動画を見るにほとんど売れなかったのは確かなようです。

新経営陣としても、旧経営陣の負の遺産の象徴と言えるこのギターを、できるだけ早く処分しておきたいと思ったのかもしれません。

また処分時の動画が撮影されており、さらに全世界に公開されるという不運には言葉もありませんが、破棄するにせよもう少し丁寧なやり方があったんじゃないかとも思えます。

いずれにせよ世界中のギタリストはもちろん、ギブソンの愛好家すら敵に回すという、最悪な状況を招いてしまったのは確かなようです。

参考リンク
Harmony Central - NEWS: GIBSON RESPONSE REGARDING FIREBIRD X VIDEO
Gibson - Firebird X
TechCrunch - 伝統のGibsonがPC内蔵でアプリが動くソリッドエレキFirebird Xを発売

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2 件のコメント:

  1. ずっとギブソンを愛用してきたが・・・もう買いません。

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  2. ギブソン はきっと、この損害分をこの後売るギターたちに上乗せしてるはず。バカな行為の損金を肩代わりしたくないから、俺も買わない。買うなら中古で。

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