今後数回に分けて、ギターアンプ用スピーカーメーカーを紹介します。第1回目はメイド・イン・アメリカにこだわって生産を続けるEminence (エミネンス)。
エミネンスはフェンダーなど多くのメーカーへOEM 供給するとともに、自社ブランド製品も開発・販売している世界最大級のメーカーです。
本記事では、エミネンスのギター用スピーカーとして定番の2シリーズから、現行の12インチモデルに絞って解説します。
各モデルの説明は、エミネンスのテックサポートスペシャリストAnthony Lucas さんがユーザーの質問に回答したもの。原文は米国のアンプメーカーDr.Z のフォーラムに投稿されています。説明中の「*」は筆者によるコメントです。
まずは真っ赤なフレームが特徴のRedcort シリーズ。イギリス軍を象徴する赤いコートから名付けられた通り、英国セレッションのスピーカーを元にエミネンス流の工夫を盛り込んだラインナップが並びます。
Man O War:Celestion G12T-75 を元に、トップエンドをスムースにし、音量を大きくしたモデル。正確かつ反応の良いサウンド。サイズは12インチ、許容入力120W、能率は8オームモデルが101.5db、16オームが101.6db、マグネットはフェライト。
*元となったG12T-75 は、長きに渡りMarshall 1960 キャビネットの標準スピーカーに採用されています。
Private Jack:Celestion Greenback を元に、低域と中低域のこもりを取り除いたモデル。12インチ、50W、8オーム101db、16オーム100.2db、フェライト。
Red Fang:Celestion Alnico Blue を元に高域を滑らかにしたモデル。12インチ、50W、8オーム102.4db、16オーム103db、アルニコ。
The Governor:Celestion Vintage 30 を元にアイスピックのようなアッパーミッドを取り除いたモデル。12インチ、75W、8オーム102.2db、16オーム102.1db、フェライト。
The Wizard:Celestion G12H Anniversary (G12H30) を元に、少しだけトップエンドを丸めたサウンド。12インチ、75W、8オーム102.8db、16オーム103.5db、フェライト。
The Tonker:ファットで丸みと暖かみがあり、スムースかつクリーン。明瞭なボトムエンドと多くのプレゼンス。12インチ、150W、8オーム101.5db、16オーム102db、フェライト。
*アンソニーさんはTonker について古いFane 風かも、としていますが、Celestion G12-65 を元にした可能性があります。
というのも当時のロベンのギターテックいわく、ロベン愛用のヴィンテージ Celestion G12-65 を元に、エミネンスと共同で「完璧なロベンモデルスピーカー」を目指して開発した製品があったそうです。
プロトタイプの出来は良く、ロベンもライブなどで使用していましたが、「完璧」とは言えず結局お蔵入りすることに。そこでエミネンスはそのデータを元にTonker を開発した、としています。詳細はこちらのフォーラムへどうぞ。
TonkerLite:マグネットをネオジムに変更して軽量化したTonker。Tonker と比較してよりオープン、バランス重視、トップエンドを少し強化、中低域のGrowl (うなり)を削減。Tonker ほどではないもののファットで丸みを帯びたトーン。12インチ、125W、8・16オームともに能率101db、ネオジウム。
Reignmaker:12インチ、75W、8・16オームともに能率100db、フェライト。*特許出願中のFDM テクノロジー(アッテネーター機能)を搭載するモデル。アンソニーさんの解説は無し。
続いてダークグレーのフレームとブルーのロゴが目印のPatriot シリーズ。「愛国者」というの名前の通り、ジェンセンのようなアメリカンサウンドを意識したラインナップです。
Canis Major:12インチ、50W、8オーム100db、アルニコ、ヘンプコーン。8オームモデルのみ。
*当時未発売のためアンソニーさんの解説はありませんが、コーンの素材にヘンプ(麻)を採用している米国Tone Tubby のスピーカーを元にしていると思われます。製品名のCanis Major とは星座のおおいぬ座のことで、背面のロゴもワンちゃんです。
Cannabis Rex:ヘンプコーンを採用し、クリーンでフル、歪みにくくウッディなトーン。ナイスなボトムエンド、有り余るほど豊かで温かみのあるミッド。明瞭なトップエンドも備えるが、他の多くの12インチモデルより柔らかいサウンド。ブライトなアンプを丸くするのに最適。12インチ、50W、8・16オームともに101.7db、フェライト、ヘンプコーン。
*これもおそらくTone Tubby 系。
Commonwealth 12:JBL E120。とても温かくリッチ、フル、スムース、クリーン、明瞭で素晴らしいプレゼンス。オーバードライブとの相性も良い。12インチ、225W、8オーム100db、フェライト。8Ωオームモデルのみ。
*巨大なマグネットを搭載し、大許容入力・超重量級(9.8kg)スピーカーなのも元ネタと同じ。
Lil' Texas:2インチのネオジムマグネットを採用して軽く(1.9kg)なったTexas Heat。とてもバランスのとれたアメリカントーン。バイト(噛みつき)感があるトップエンド、パリっとしたミッド、タイトなローエンド。12インチ、125W、8オーム101.2db、16オーム100.9db、ネオジウム。*アンソニーさんの元ネタ解説なし。オリジナル?
Red White And Blues:とてもブルージーなトーン。適度なローエンド、温かくスムースで豊富なミッド、僅かにブライト。12インチ、120W、8オーム101db、フェライト。8Ωオームモデルのみ。
*製品名は星条旗の色から。アンソニーさんの元ネタ解説なし。オリジナル?
Screamin Eagle:ボイスコイルのサイズを1.75インチにしたTexas Heat (Texas Heat は2インチ)。タイトなボトムエンドとパリっとしたミッド。とてもブライトで明瞭なサウンド。12インチ、50W、8オーム100.7db、16オーム101.2db、フェライト。
*元ネタ解説なし。
Swamp Thang:ブ厚く太いアメイジングなフェンダークリーン。歪みにくくビッグなトーン。素晴らしいボトムエンド、スムースなトップエンド。高能率。ヘビーメタル向けではないと思うが、エフェクターや歪みとの相性も良い。12インチ、150W、8オーム101.9db、16オーム102.3db、フェライト。
*元ネタ解説なし。
Texas Heat:温かくファットなトーン。ナイスなボトムエンドとパリっとしたミッド。控えめなトップエンドながらバイト感と明瞭さは維持。充分なクランチ。タッチに敏感。アメリカン系に調整したコーンにブリティッシュ系の味付けをしているため、アンソニーさんはMarshal meets Fender なスピーカーと呼んでいる。12インチ、150W、4オーム98.96db、8オーム99.4db、16オーム100.2db、フェライト。
*元ネタ解説なし。
上記2シリーズではありませんが、最後に2モデルを紹介します。説明はメーカーサイトより。
EJ1250:米国のギタリストEric Johnson と、John Mayer が使用しているキャビネットメーカーAlessandro High End Products のGeorge Alessandro、そしてエミネンスの3者が協力して生み出した、エリック・ジョンソンシグネチャーモデル。
英米のスピーカーの特徴を併せ持つ素晴らしいヴィンテージトーン。パンチの効いたロー、温かく野太いミッド、明瞭なハイ。12インチ、50W、8オーム100.9db、16オーム100.8db、アルニコ。
Delta Pro 12A:アンソニーさんいわくEVM12L。メーカーサイトではオーディオやPA用として掲載されています。12インチ、400W、8オーム99.2db、フェライト。
解説は以上です。国内代理店はサウンドハウスが務めており、大半の製品を常時在庫しています。
参考: Eminence Speaker
サウンドハウス - エミネンス一覧
コラム:ギターアンプ用スピーカーメーカー紹介 Celestion 編。各モデル解説
サウンドハウスが米国のスピーカーメーカー EMINENCE と代理店契約を締結
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