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2017/05/03

確定:タイラーが使う謎の木材「マムヨ」の正体は「ジェルトン」


米James Tyler Guitars が多用する謎の木材「マムヨ」は、一般的に「ジェルトン」として知られる木であることがわかりました。

これは筆者がふと「マムヨって何だ?」と思い、タイラー公式サイトからメールを送ったところ、10分弱という驚異的な早さで回答が届いて判明したものです。



筆者の質問は:

1. マムヨについて教えてください。Dyera Costulata いうマレーシア産の木だという噂がありますが本当ですか?

2. 音質の特徴を教えてください。バスウッドに似ているのでしょうか?

これに対するタイラーの回答は:

1. あなたの指摘の通りです。Mamywo はジェームズ(タイラー創業者)がJelutong (Dyera Costulata) に付けた名前* です。

*海外ではMalaysian mysterious wood (マレーシア産の神秘的な木)の略であるという噂があります

2. 鳴りがよく、丸みのある音質の木です。中域の上から下まで幅広くカバーします。超高域や低域は多くありません。


つまり音質については、中域を中心にバランス良く鳴る木という理解で良さそうです。

ちなみにバスウッドはシナノキ科、ジェルトンはキョウチクトウ科に属する、別の種類の木です。

ではジェルトンの木材としての性質はというと、ネット上で調べた限りでは以下の通りです。

・硬度:柔らかい
・重量:軽い
・杢目:少ない
・加工性:良好
・耐久性:低い。カビて表面が青くなりやすく、虫害も受けやすい。
・絶滅リスク:低
・用途:彫刻、鉛筆、マッチ、ハイヒールのかかと、合板など。樹液はチューインガムの原料。

これらを鑑みると、耐久性の低さをカバーできれば、安定して入手でき加工もしやすいので、ギターの製作に向いた木材と言えそうです。



(ジェルトンを使った彫刻の動画)

なおマムヨはとても柔らかいため、ネジ穴が緩みやすい傾向にあります。その対策として、米国製の本家モデルと日本製のJames Tyler Japan ともに、ブリッジのスタッド穴を大きめにあけて別の種類の木材で埋めることで、強度を確保しています。

さらに本家モデルは、ネックヒールのネジ穴に金属製のスリーブを付けて、そこへ固定ネジを締め込むようにすることで、ジョイント位置のズレない強固な接続を実現しています。


このスリーブは、あえてネックから1/4インチ(6.35mm)飛び出るようにすることで、飛び出た部分がボディ側に入り込み、ネックとボディの接続がより強固になるとのことです。

目に見えない部分まで工夫をこらして手間をかけるという点に、高級ギターメーカーとしての矜持が感じられます。

参考リンク
James Tyler Guitars
イケベ楽器 - タイラージャパン 飛鳥ファクトリーツアー
木材博物館 - ジェルトン
株式会社丸米商会 - ジェルトン
村上木材株式会社 - ジェルトン
Wikipedia - Dyera costulata

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