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2016/11/08

マイクプリアンプは高価なほど高音質?300ドルから4000ドル超の8機種をブラインドテスト


英国のサンレコ(勝手に命名)ことSOS (Sound On Sound) が、興味深いテストを実施していたのでご紹介します。

テストのタイトルは"Preamp Post-mortem" (プリアンプ検死解剖)。実売300ドルのエントリーモデルから、4000ドルを超えるハイエンドモデルまで8種類のマイクプリアンプをブラインドテストし、価格に応じた違いを聴き分けられるかという内容です。



はじめに使用機材とおおよその実売価格をまとめると、まずマイクプリは、

  • ART Pro MPA II:300ドル
  • Mackie 1402VLZ Pro MkII:400ドル* (ミキサー)
  • AMS Neve 1073LB:1000ドル
  • Solid State Logic XLogic Alpha VHD Pre:1800ドル
  • API 3124+:2700ドル
  • Prism Sound Maselec MMA-4XR:4000ドル
  • Prism Sound Orpheus:4500ドル (オーディオインターフェイス)
  • GP Electronics / Freevox Audio PML200E:価格不明(4000ドル超?)

*廃盤のため価格は現行の同等モデルを参考にしています。テスト時(2012年)の中古相場は100ドルほど。

マイクは以下の3種類を使いステレオで録音。モノラルのゼンハイザーとブラウナーは2本ずつ使用しています。

  • Sennheiser MKH20:1200ドル、コンデンサー
  • Brauner (モデル不明):1本2000~10000ドル、真空管コンデンサー
  • Royer SF-12:2695ドル、ステレオリボン

そして肝となる音源には、ヤマハの自動演奏グランドピアノDisklavier を選択。

ヴォーカルや生演奏の場合、マイクプリ8種とマイク3種の計24テイクを完全に同じ内容で揃えることは不可能なため、毎回同じ演奏ができ、マイクとの位置関係も固定できるDisklavier を使用しています。



最終的なセットアップは、ピアノ - マイク - マイクプリアンプ - オーディオインターフェイス(Prism Sound Orpheus) - PC。

PC での編集は、24bit/44.1kHz で録音したものを16bit に変換するのみ。EQ などのエフェクト処理はせず、音量も録音前に揃えています。

実際の録音データはSOS のサイトで無償配布中。データはマイクの種類ごとに分かれており、ファイル形式はWav。ファイル名はAからHのアルファベットで、マイクプリの名前は入っていません。

またマイクごとにマイクプリの使用順も変えています。たとえばゼンハイザーのファイルAとロイヤーのファイルA は、それぞれ異なるマイクプリです。

SOS は読者へマイクごとに好きなファイルを選んで投票するよう依頼し、結果を公開しています。

結果のまとめは以下の通り。左から順にファイル名、プリアンプ名、読者からの平均得点、1位に選んだ読者数です。

見る前に自分でモデルを推測しつつランク付けしておくと、より楽しめると思います。

ブラウナー
A:ART Pro MPA II、7.5点、5人
B:AMS Neve 1073LB、3.4点、1人
C:API 3124+、2.875点、0人
D:Mackie VLZ Pro、6.8点、2人
E:SSL XLogic VHD、6.45点、4人
F:GP Electronics PML200E、4.2点、2人
G:Prism Sound MMA-4XR、6.4点、2人
H:Prism Sound Orpheus、6点、4人

ゼンハイザー
A:GP、5点、2人
B:ART、7.4点、3人
C:MMA-4XR、3.5点、1人
D:Neve、5点、1人
E:SSL、5.5点、1人
F:Orpheus、7点、1人
G:Mackie、5.6点、0人
H:API、5.5点、1人

ロイヤー
A:Mackie、3.8点、0人
B:MMA-4XR、3.5点、0人
C:Orpheus、6.75点、2人
D:SSL、6.57点、3人
E:API、3.75点、1人
F:GP、5.6点、1人
G:Neve、6.4点、3人
H:ART、5.6点、2人

これらの結果をまとめると、

1位 ART:20.5点、10人
2位 Orpheus:19.75点、7人
3位 SSL:18.52点、8人
4位 Mackie:16.2点、2人
5位 Neve:14.8点、5人
5位 GP:14.8点、5人
7位 MMA-4XR:13.4点、3人
8位 API:12.125点、2人

なんと最も安い300ドルのART が、10倍以上高価な他社製品を抑えて、得点と1位に選んだ読者数の両方でトップに立ちました。

またその次に安い(中古なら最安)マッキーも、1位に選ぶ人こそ少ないものの安定して中位に食い込んでおり、最終的に4位という上位グループに入りました。

もちろん読者はモデル名や価格を知らず、純粋に音だけを聴いて投票しています。


SOS いわく「この結果は衝撃的」。特にART は、レコーディングに立ち会ったスタッフから満場一致で低評価だったため、価格や見た目の安っぽさに惑わされていたことを認めざるを得ないと述べています。

また1位に選ばれたマイクプリが分散しているのも興味深いところです。音の良し悪しは人それぞれなので当然ではありますが、高価格イコール高音質ではないことを明確に示す結果となっています。


最後にSOS のコメントを抄訳してご紹介します。

今回のテストではART が高い評価を受けましたが、かといって高価なマイクプリアンプが無意味という訳ではありません。

この結果が示すのは、ピアノソロの録音において重要なのはマイクの種類や設置場所、部屋の音響、楽器、そして曲であり、マイクプリの影響はとても小さいということです。

またマイクプリをサチュレーションするまでプッシュすれば、評価が一変する可能性は十分にあります。

我々はこのテストによって、レコーディングの世界における、ある種の固定観念が変わることを願っています。

マイクプリは魔法の箱ではありません。予算が限られている場合は、高価なマイクプリを買うよりも、マイクや吸音材に投資したり、マイクの位置を試行錯誤したほうが、求めるサウンドに近づける場合が多々あります。

「安い機材では良い音で録音できない」という言葉に惑わされないでください。大丈夫、できますよ。

ソース: Sound On Sound - Preamp Post-mortem
参考: SOS - Pick A Preamp (音源ダウンロード)
SOS Forum - Preamp comparison in SOS October 2012: your views!
SOS Forum - Preamp comparison in SOS October 2012: the key!
ART - Pro MPA II
AMS Neve - 1073LB
API - 3124+
SSL - XLogic Alpha VHD Pre
Prism Sound - Maselec MMA-4XR / Orpheus
Freevox Audio - PML200-P
ゼンハイザージャパン - MKH 20-P48
Brauner Microphones
Royer Labs - SF-12
ヤマハ - グランドピアノ

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