米Heritage Guitars が、Gibson を提訴したことがわかりました。理由はギブソンから「実質的な廃業」を要求されたためとしています。
ヘリテイジによると、ギブソンとは1991年に相互不干渉の合意を取り付けており、以降30年近くに渡って良好な関係を築いてきたとのこと。
しかし2017年にギブソンが経営破綻し、投資ファンドKKR (コールバーグ・クラビス・ロバーツ) に買収されるとともに新たな経営陣が就任すると態度が一変。
ヘリテイジがギブソンの商標などを侵害しているとして、実質的な廃業を求める文章を送付してきたとしています。
これに対しヘリテイジは、要求が不当であるとしてギブソンを提訴。どちらが正しいのか司法の判断に委ねることとなりました。
なお「実質的な廃業」の内容は明かされていませんが、仮にギブソン系モデルの製造停止を求められたとすれば、すなわち全ラインナップの製造停止ということになり、会社として成り立たなくなります。
そもそもヘリテイジは、1984年にギブソンが創業地のカラマズーからナッシュビルに移転する際、カラマズーに留まることを選んだ従業員たちによって設立された会社。
長きに渡り、ギブソンが創業時から使っていた建物や設備をそのまま用いて、当時のままの製法でギターを作り続けていた、いわば真のギブソンと言える存在です。
そんな "本家ギブソン" が、創業時の建物も設備も職人も居ない、実質的にコピーブランドと言える現在のギブソンを訴えるという、なかなか興味深い状況になっています。
経営破綻後のギブソンが、コピー品の駆逐にご執心なのは多くの人が知るところです。
最近ではディーンを訴えたかと思いきや...
ギブソンがディーンを提訴。ヘッドやボディの形状を無断でコピーしたことが理由です。要求している賠償額は数百万ドル。新体制になったギブソンは、コピーメーカーへ対して断固たる態度を取ることを明らかにしているため、今後も訴えられる会社は増えるかもしれません。https://t.co/sKCEVeh6GE— Gear_Otaku (@gear_otaku) June 21, 2019
EU ではフライングV の商標を失い...
ギブソンがEU 圏内におけるフライングV の商標登録を求めた裁判で敗訴。理由は「発売当時の1958年においては独創的な形状と言えたが、それから50年以上が経った現在ではありふれたものとなった。また消費者はギターのデザインを特定のギターメーカーと結びつけることはない」https://t.co/IQ4nfXwDdw— Gear_Otaku (@gear_otaku) June 29, 2019
さらにはKiesel に警告文を送付するという熱の入れようです。
ギブソンがKiesel に警告文を送付。理由は「Ultra V がフライングV の、CS6 がレスポールのデザインを、それぞれ盗用している」ため。詳細はリンク先の動画の7分頃から。Kiesel の社長が状況を説明しています。https://t.co/Z197c6oHdJ pic.twitter.com/rifc8f6VI3— Gear_Otaku (@gear_otaku) February 14, 2020
この情熱を製品開発や品質管理に注いだほうが、コピー品を撲滅するよりよほど売り上げに貢献するような気がするのは筆者だけでしょうか。
なおヘリテージは2017年に、ギブソンからCakewalk Sonar を買取したことで知られる、シンガポールのBandLab 社の傘下に入っています。
そのBandLab 社の創業者は、父と叔父がともに世界トップクラスの大富豪という家柄のため、KKR という世界最大級のファンドとも資金の心配なく争えるのでしょう。
引き続き、今後の動向を見守りたいと思います。
ソース:Guitar.com - EXCLUSIVE: GIBSON SUED BY HERITAGE OVER FRESH TRADEMARK THREATS
参考リンク
Heritage Guitars
Heritage Guitars (Facebook)
Cakewalk by BandLab
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