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2015/10/22

真空管製造会社と選別会社まとめ 2015年版


デジタル製品が一大勢力になりつつあるギターアンプ業界において、それでもなおチューブアンプにこだわるギタリストは数多く存在します。

その心臓といえる真空管の会社もまた多数存在しますが、それらは「製造会社」と「選別会社」に大別できます。

そこで本記事では、2015年10月時点の状況をもとに、ギターアンプで使われることの多い真空管会社を分類してまとめました。



まず製造会社について。ひとつめはスロバキア共和国のJJ Electronic。旧テスラ (Tesla) の工場を使って製造しています。創業は1994年。

ちなみにチェコスロバキアがチェコとスロバキアに分離したのは1993年1月です。


ふたつめは中国の曙光電子 (Shuguang)。いわゆるチャイナ管はここが製造しています。


製造会社の最後はアメリカのNew Sensor Corporation。エレハモことElectro-Harmonix の創業者マイク・マシューズ氏の会社です。

本社はニューヨークですが、真空管はロシアのサラトフ市にあるXpo-Pul 工場 (旧リフレクター工場) で製造されています。

またニューセンサーは、エレハモとSovtek という独自ブランドの他に、Tung-Sol、Mullard、Genalex Gold Lion、Svetlana といった過去の著名な真空管メーカーの商標も取得しており、それらの製品も同じ工場で製造しています。

なおSvetlana には、ニューセンサーが製造する「S ロゴ」と、ロシアのJSC Svetlana 社がサンクトペテルブルクで製造していた「Winged C ロゴ」(=C=) の2種類が存在します。

JSC Svetlana という会社は今も存在しますが、真空管部門は2012年に閉鎖されたため、本家Svetlana といえる「Winged C」を入手するにはNOS や中古を探す必要があります。


少し脱線しますが、ここでエレハモの歴史をざっくりまとめると、まず創業は1968年。その後1980年代初頭に一度倒産し、商標も売却されます。

倒産後、マシューズ氏は当時のソビエトに渡りNew Sensor を創業。そこで購入した真空管工場が大きな利益を上げるようになり、エレハモの商標を買い戻すことにも成功しています。

つまり現在のエレハモは、正確には会社ではなく、New Sensor 社のブランドのひとつです。


話を真空管に戻して、選別会社について解説します。

以下に挙げる会社は真空管を製造しておらず、前述の製造会社から真空管を購入して独自の基準で選別し、オリジナルブランドとして販売しています。

また中には真空管を独自に設計し、製造会社に依頼して製造・販売しているところもあります。



まずは米国Groove Tubes (グルーブチューブ)。真空管選別という市場を生み出した会社のひとつです。

Aspen Pittman 氏が1979年に創業し、2008年にFender に買収されてからはフェンダーのアンプに標準搭載されています。

またパワー管へ特性に応じた1から10の数字を割り当てる「パフォーマンス・レート」システムを考案した会社でもあります。

これはサウンドの目安になるとともに、交換時に真空管の種類とレーティングが同じであればバイアス調整が不要というのも大きなメリットです。

(Image from thetubestore.com)

参考までに、上の画像は米国の真空管小売店The Tube Store によるGT 管の元ネタ一覧。

GT のような選別会社の製品には安心感がありますが、元ネタの真空管を仕入れて独自に選別する小売店から買うほうが、品質は同等で安く済むこともままあります。


続いてこちらはRuby Tubes。ヴィンテージ真空管などを扱う米国Magic Parts 社のオリジナルブランドで、大半がチャイナ管です。



アメリカから海を渡ってドイツのTAD ことTube Amp Doctor。ここも大半がチャイナ管です。



さらにドーバー海峡を渡って英国PM Components。スタンダードなPM Tubes ブランドと、より念入りに選別したGolden Dragon ブランドの2種類を揃えます。主な生産国は前者が中国、後者が中国とロシア。



またアンプメーカーではありますが、MESA/Boogie は自社のアンプ用に選別した真空管を市販しています。仕入先はその時の状況に応じて変わるとのことです。


まとめると、現存する大規模な真空管製造会社はロシアのNew Sensor、スロバキアのJJ、中国Shuguang の3社。

選別会社は有名どころのGT、Ruby、TAD、PM の4社を取り上げましたが、ほかにも独自ブランドの真空管を販売している会社は数多く存在します。


最後にShuguang の製造工程の動画をご紹介。想像以上に手作業の占める割合が多くて驚きます。





ソース
New Sensor
JJ Electronic
Shuguang
Groove Tubes - EN / JP
Ruby Tubes - EN / JP (ドクターMusic)
TAD - EN / JP (サウンドクルー)
PM Components - EN / JP (テクソル)
MESA/Boogie - EN / JP (キョーリツ)

参考
米国におけるNew Sensor 社の登録商標一覧
JSC Svetlana
Winged C
SED Tubes
Sevenstring.org - Who makes Mesa Boogie tubes?
(投稿11、14、16、22がメサのサポート)

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