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2017/01/27

インタビュー抄訳:チューブスクリーマーの生みの親、田村進


オーバードライブペダルの名機Tube Screamer TS808。この日本生まれの緑色のペダルは、発売以来40年近くに渡り、ギタリストとエフェクター開発者の両方から愛され続けています。

その名機を開発したのが、マクソンの田村進氏。本記事では米国のギター雑誌Premier Guitar による、田村氏へのインタビューを抄訳してご紹介します。




本題に入る前にTS の歴史をざっくりまとめると、初代TS808 の発売は1979年(昭和54年)。日伸音波製作所が開発し、星野楽器がアイバニーズブランドで販売しました。

日伸音波製作所は1966年に長野県松本市で創業。ギター用ピックアップの製造から始まり、その後はエフェクターなどのOEM 生産を請け負うとともに、1971年にはオリジナルブランドMaxon を立ち上げて多くの名機を生み出しています。

長きに渡り日本のギター業界を支えてきた日伸音波において、製品開発の中心だったのが田村氏です。

元のインタビューは2013年に、田村氏の還暦と退職を記念しておこなわれました。

Premier Guitar (以下PG):日伸音波製作所に入社したのはいつですか?

田村進氏(以下TS):1974年です。それ以来40年に渡り勤めてきました。

PG:日伸音波で最初に設計したペダルは何ですか?

TS:Phase Tone PT999 です。その前はブースターやワウの基板を再設計していました。

PG:チューブスクリーマーの開発コンセプトを教えてください。

TS:ファズやディストーションのようなハードクリッピングではなく、真空管アンプのようなオーバードライブサウンドを目指しました。

あらゆる種類のギターやアンプに対応できるように、"箱鳴り感" のある、中域が強調されたサウンドにしています。

PG:つまりTS の特徴と言える中域が強調されたサウンドは、様々なアンプやギターとの相性を考えた上での、意図的なのものだったということですか?

TS:そうです。当時主流だったファズやディストーションペダルの、暴れる低域や耳障りな高域を抑えることで、幅広いスタイルに対応できるペダルになりました。

PG:TS808 の回路はまったく新しいものでした。あなたは自分が革新的なものを生み出したという認識はありますか?

TS:多くの人がそう尋ねてきますよ。ただ当時の我々は、単にBOSS OD-1 (1977年発売)やMXR Distortion+ (1973年発売)の対抗馬が必要だと考えていただけです。

ひとつの音楽スタイルが流行れば、それを真似するレコード会社が増えるのと同じようなものですね。

つまり特別なものをつくることは目的ではありませんでした。もちろん多くの人に愛されて欲しいとは思っていましたよ!

Godlyke (マクソンの米国代理店)と星野楽器の営業力に加えて、超一流のギタリストが使ったことで、これまでに35万台ものTS とその派生モデルを出荷してきました。

PG:マクソンとアイバニーズのために開発したすべての製品の中で、もっとも記憶に残っているものを教えてください。

TS:PE3248 というプログラマブル・スイッチングシステムを設計したことですね。高中正義という日本の有名なギタリストのためにカスタムメイドしたものです。それを元にUE400 やDUE400 といったマルチペダル/マルチエフェクト製品が誕生しました。

またAD80 やAD9 などのBBD を使ったアナログディレイについても誇りに思っています。AD230 という素晴らしいサウンドのディレイを元に開発しました。あとはPDS1 のようなDCP (Digitally Controlled Processor)ペダルシリーズも忘れられませんね。

PG:AD230 のどんなところが特別なのでしょうか?

TS:その頃は高品質でメンテナンスフリーの、BBD を使ったラック型アナログディレイは存在しませんでした。ハイエンドなディレイユニットの多くが磁気テープを使っていたんです。

AD230 は耳につく高域の倍音成分を抑えることで、とてもスムーズでリアルなサウンドを獲得しました。またショート/ロングディレイに加えて、フランジャーやコーラスといったモジュレーションも備える、オールインワンのマルチディレイユニットでもありました。

PG:最後にまとめの言葉をお願いします。

TS:デジタルは本物に迫りつつありますが、本物にはなり得ません。アナログこそが本物です。デジタルには劣化なしに保存・伝達できるというメリットがあります。しかし音楽を作るミュージシャンと、それを受け止める観客の耳、目、口、指はすべてアナログなのです。


抄訳は以上です。元の記事には子供の頃の話や趣味についてなど、個人的な話題についても掘り下げているので、興味の湧いた方は下のソースリンクへどうぞ。

ソース: Premier Guitar - State of the Stomp: Maxon's Susumu Tamura Interview
参考: アイバニーズ - TS808
マクソン公式サイト
Maxon AD230 取扱説明書 (PDF)
ESPギタークラフトアカデミー東京ブログ(旧) - 2013年第一弾特別講義「マクソン」
サウンドハウス - Maxon ギターエフェクター一覧

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