米国のエフェクターメーカーEarthQuaker Devices が、2016年の新製品を発表しました。
オーバードライブ、ディストーション、ファズ、ディレイ、トレモロ、エンベロープフィルターなど、新たに8モデルがラインナップに加わります。
EQD による各ペダルの説明を抄訳すると、
Bows: ゲルマニウム・プリアンプ・ブースター。希少なNOS OC139 ブラックグラス・トランジスタを中心に設計。ノブは1つながら、Full / Treble ミニスイッチと組み合わせることで多彩なサウンドを創り出せる。
Full モードは暖かくフルボディかつ太いローエンド。Treble モードは鳴り響くようなトレブルブースターサウンドで、「クックド・ワウ」(ニワトリの鳴き声のようなワウ)トーンも備える。あらゆるチューブアンプを倍音成分豊かなディストーション領域までプッシュ可能。
両モードともにノブが最小でもわずかに歪んでおり、12時位置を超えるとより歪む。Bows の前に歪みペダルをつなぐと、Full ではカオスな音の壁を、Treble では究極のリードトーンを生み出せる。
2016年3月発売予定。定価145ドル。
Bellows: ファズドライバー。オーソドックスなトランジスタベースのダート・デヴァイス(歪みペダル)。アンプライクな歪みとヴィンテージツイードアンプのようなファズの両方に足を掛けている。
マスターヴォリューム非搭載のアンプのように、Drive ノブは入力段を叩く強さを調節。最小ではアンプライクかつメローなブレイクアップ(軽い歪み)、最大ではあらゆるものを吹き飛ばすようなファズサウンド。この箱1つであらゆる時代のロックンロール・サウンドが創り出せる。基本的にギター用だがベースでもばっちり。(訳注:動画ではギターとベース両方を聴けます)
2016年4月発売予定。定価145ドル。
Spires: ファズ・ダブラー。私(訳注:EQD の創業者で設計者のJamie Stillman)のペダルボードに、古いRosac Nu Fuzz* とEQD Dream Crusher をまとめて入れたいと思って生まれたペダル。
Green チャンネルは全開にしたRosac Electronic Nu-Fuzz にインスパイアされている。オリジナルの回路にはいくつか謎の部分があるので、サウンドをコピーするために独自回路を開発したところ、完全に同じサウンドになった。
可変域の広いトーンコントロールを備える純粋なファズで、ビッグで暖かいサウンドからジリジリと焼けつくようなサウンドまで創り出せる。オリジナルは最大でも原音より音量が下がるので、音質は保ちつつ最大音量を大幅に上げている。
Red チャンネルは先日生産終了したゲルマニウムファズDream Crusher のシリコン版。より安定し気温の変化にも強くなった。
2016年2月発売予定。定価195ドル。
*Rosac Nu-Fuzz は、Mosrite Fuzzrite の開発者Ed Sanner が手がけたファズペダル。EQD がオリジナルを持っていながら回路が謎と言っているのは、オリジナルの回路全体がさやえんどうのようなビニールで覆われており、分析するには破壊が不可避なため、レアなペダルということで躊躇したのかもしれません。
Gray Channel: ダイナミック・ダート・ダブラー。これは私が愛してやまない、クラシックなハードクリッピングのグレイボックス・オーバードライブ(わかりにくいヒントかな?)を元にしている。また私がペダル製作とEQD を始めるきっかけになったペダルとほぼ同じでもある。ギターやアンプの個性を活かす、シンプルなハードクリッピングの2チャンネルOD。
このペダルはクラシックな暖かいオーバードライブサウンドに、いくつかのクリッピングオプションとビッグな低域を加えている。各チャンネルは3種類のクリッピングモードを選択可能。
Green チャンネルはSi (シリコンダイオード)、Ge (ゲルマニウムダイオード)、N (クリッピングダイオードなし)。
Si はブライト/ラウド/ファジーで真空管のような自然な歪み。Ge は少しルーズで低域が太く、音量が下がる。N はGain ノブが1時ぐらいまではクリーンブーストで、それ以降はオペアンプがサチュレーション(飽和・歪み)し始め、ラウドで噛みつくようなディストーションになる。
Red チャンネルはLED (LED クリッピングダイオード)、FET (Mosfet クリッピングダイオード)、N (クリッピングダイオードなし)。
LED は最も大音量かつクリーン。また最もタッチに敏感でコンプレッションされないモード。Mos (訳注:FET の間違い?)は最もコンプレッションが強くタイトな歪み。この中で最大のhesher*。N はGreen と同じくクレイジーにラウドなオペアンプ・ディストーション。
2016年3月発売予定。定価は195ドル。
*Hesher は米国で2011年に公開された映画Hesher とその主人公を指していると思われます。日本では「メタルヘッド」として公開されました。
あらすじは「事故で母を失い心に大きな傷を負った親子と、人生を見失ったスーパーのレジ係ニコール(ナタリー・ポートマン)。彼らの前に突然現れた、長髪に半裸の謎の男ヘッシャーは、親子の祖母の家に勝手に住みつき、大音響でヘヴィメタルを流しながら様々なトラブルを起こす。だがヘッシャーの過激でパワフルな姿が、彼ら3人を変えてゆく」
Night Wire: ダイナミック・ハーモニック・トレモロ。ハーモニックトレモロとは、信号を分割してハイパスとローパスの2つのフィルターに通した後、LFO で180度変調するトレモロのこと。各フィルターの中心点を調節できるNight Wire は、伝統的なハーモニックトレモロの数歩先を進んでいる。
フィルター周波数はManual、LFO、Attack の3種類から選択可能。Manual モードではFrequency ノブで固定の中心周波数を設定できる。LFO モードでは常時可変するフィルターの速度をFrequency ノブで調節。Attack モードではフィルターがピックアタックとFrequency ノブにダイナミックに反応し、一般的なエンヴェロープフィルターのようなサウンドになる。
トレモロはManual とAttack の2つのモードを選択可能。違いはトレモロスピードの調節方法で、Manual モードではRate ノブで調節。Attack モードのトレモロスピードはピックアタックで変化し、Rate ノブではピックアタックへの反応を調節する。(強く弾くと早くなり、弱く弾くと遅くなる)
トレモロの深さはDepth ノブで調節。ゼロにすると選択したモードに応じて固定フィルタ、フェイザー、エンヴェロープコントロールフィルターのいずれかの効果になる。Level ノブでは音量をカット・ブースト可能。
2016年2月発売予定。定価195ドル。
Spatial Delivery: サンプル&ホールド機能つきエンヴェロープフィルター。Up Sweep、Down Sweep、Sample and Hold の3つのモードを選択可能。Up とDown モードでは、Range、Resonance、Filter の3つのノブを使うことで超強力なフィルター効果が得られる。
Range ノブはピックアタックと連携してエンヴェロープの感度と反応速度を調節する。周波数の可変域の幅を設定するようなイメージ。Range を上げて強く弾くと、反応が早まり可変域も広がる。
サンプル&ホールドモードでは、フィルターはランダムに可変する電圧でコントロールされ、Range ノブでは可変速度を調節する。
Filter ノブは左に回すとハイパス、中央でバンドパス、右に回すとローパスの各フィルターになる。
Resonance ノブでは発振寸前のサウンドやしっかりとしたボディをフィルターヴォイスに加えられる。
Spatial Delivery はボードの最初に置くことを勧めるが、色々なペダルと組み合わせたり設置場所を変えることで、秘めた能力を最大限に活かすことができる。
2016年2月発売予定。定価195ドル。
Dispatch Master と同じくディレイとリバーブを一つの筐体に収めたペダルだが、サウンドは大きく異なる。ディレイはBBD の繊細さを備えたテープディレイ風。リバーブはより深く、洞窟を思わせるプレートリバーブのようなサウンド。
その他の主な仕様は、
- リバースディレイモード
- Swell Delay and Reverb モード
- サブディビジョンつきタップテンポ
- 任意の機能を割り当てられるエクスプレッション・コントロール
- Trails モードとTrue Bypass モードを選択可能
- サウンドオンサウンドスタイルのルーパー機能 (Trails モードでは長さを設定可能)
- Tap スイッチを踏み続けることで自動的に発振
2016年3月発売予定。定価295ドル。米国Reverb.com 限定販売。執筆時点で開発中のため、デモ動画は後日公開とのことです。
5月2日追記:デモ動画が公開されました。
Acapulco Gold: 元々は昨年に数量限定で販売した製品で、人気のためデザインを一新して通常モデルとして販売します。
2016年4月発売予定。定価117ドル。詳細はオリジナルの記事をどうぞ。
EarthQuaker Devices Acapulco Gold 発売、SUNN Model T のパワーチューブ・サチュレーションを目指したワンノブドライブペダル (2015年9月19日)
EQD は昨年末に新モデルの発売を理由に7モデルを生産終了していましたが、7つの新製品とリニューアル1つできっちり穴を埋めてきました。
また今月21日からのWinter NAMM では、昨年発表されたEQD初のアンプSound Projector 25 の続報にも期待したいところです。
ソース: EarthQuaker Devices - Official Site / Instagram
参考: The Gear Page - EarthQuaker Devices Teaser: 7 New Pedals For NAMM 2016
Chris Nelson - 1970 ROSAC NU-FUZZ
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